管理ネットワーク利用のススメ

現在販売されているすべてのBIG-IPシリーズには筐体の左端にmanagement portが備わっています。
これを使用すると、ここ経由でBIG-IPにログインすることができます。

この機能により、以下のようなメリットがあります。


  • 運用管理サーバから直接アクセス可能になるので、運用管理系のネットワーク構成がシンプルになる(複数のVLANが設定されているような構成で、どこからアクセスしていいか等悩む必要が無い)
  • 各VLANに割り当てられるSelf IPアドレスに穴をあけて(Port Lockdown設定)、sshやhttpsなどの管理用トラフィックを受け付ける必要がなくなる
  • シリアルケーブルの物理的な接続無しにBIG-IPのバージョンアップやインストール、再起動が行える


以下で管理ポートの設定と関連項目の説明をします。


  • アーキティクチャ
    BIG-IPのハードウェアは以下の3種類のサブシステムから成り立っています。

    1. Host サブシステム
      M/Bです。CPU処理やメモリアクセスを行います
    2. SCCP(AOM) サブシステム
      システム全体の管理を行います
    3. Switch サブシステム
      L2処理等のネットワーク処理を受け持ちます


    管理ポートはSCCP(AOM)と接続されています。

  • SCCPとAOM

    SCCPとはSwitch Card Control Processorの略です。詳細はこちら。
    SOL3454: Overview of the SCCP

    AOMはBIG-IPの新しいハードウェア(1600/3600 : 黒いの)に搭載されるSCCP相当のサブシステムで、Always On Managementの略です。
    以前の型(1500-8800 : 青いの)では各サブシステムがそれぞれEthernetケーブルで接続されて別々に動作していたためSCCPを使用してコントロールしていたようですが、黒いのは一枚のボードになったようで、AOMではそれほど複雑な制御はしていないようです。外から使う分にはインターフェイスのスピードが100BASEから1000BASEになった以外に変化はありませんが、シンプルになっている分信頼性は高いのではないかと思います。

    SCCP/AOMにログインした場合、Hostには内部のシリアルインターフェイスを使用してアクセスすることができます。
    このため、Hostへのシリアルアクセスの方法は、コンソールケーブルによる直接アクセスとSCCP/AOM経由の2種類用意されていることになります。

  • IPアドレス割当

    内部的には2個のコンピュータ(SCCP/AOMとHost)が動作していることになるので、管理ポートには2個のIPアドレスを割り当てることができます。1個がSCCP/AOMにログインするため、もう一つがHostに直接入るためです。SCCP/AOMに外部からアクセスしない場合はSCCP/AOM用のIPアドレスを設定する必要はありません。個人的には両方設定しておくのがおすすめです。

  • IPアドレスの設定

    SCCP/AOMを使用する場合、最初だけはコンソールケーブルで接続してIPアドレスを設定します。設定手順は以下の通りです。

  • PCとBIG-IPをシリアルケーブルで接続します

  • PCのターミナルソフト(Hyper TerminalやTera Term)でターミナルセッションを開始します
    スピードを19200にすれば、他はデフォルト設定でいけるはずですが、設定の詳細は以下を参照してください。

    SOL7683: Connecting a serial terminal to a BIG-IP system


  • メニューを表示させます

    --- Press ( for Command Menu.

    と表示されるので指示に従います。
    以下のようなメニューが表示されます。

    Enter AOM ESC Command Handler

    AOM Command Menu

    1 --- Connect to Host subsystem console
    2 --- Reboot Host subsystem (sends reboot command)
    3 --- Halt Host subsystem (sends halt command)
    4 --- Reset Host subsystem (issues hardware reset--USE WITH CARE!)
    5 --- Reboot AOM subsystem (issues hardware reset--USE WITH CARE!)
    L --- AOM subsystem login
    N --- AOM network configurator
    P --- AOM platform information

    Enter Command:


    'N : AOM network configurator'はコンソールケーブル経由でしか表示されません。

  • ネットワークの設定

    ここで設定するのは以下の内容です。

    • DHCPの有無

      以下、DHCP無しの場合
    • ホスト名(オプション)
    • IPアドレス
    • ネットマスク
    • ブロードキャストアドレス(オプション)
    • Default gateway(オプション)
    • DNSサーバIPアドレス(オプション)

    設定がうまくいっているかどうかは'L : AOM subsystem login'でシェルに移行し、そこからifconfig -aを実行すると確認できます。ちなみにログイン名/パスワード(初期)は'root/default'です。

  • SCCP/AOMにログイン
    SSHクライアントからSCCP/AOMにログインするとプロンプトが表示されるので、以下のコマンドでメニューに入ります。

    root@AOM1:~# hostconsh


    この後 ESC + ( でメニューを表示させ、1 : Connect to Host subsystem console でホストにログインできます。
    ここでホストを再起動させるとsshのようにセッションが切られず、再起動の様子を見ることができます。
    ホストを抜けてSCCP/AOMに戻るときは ESC + ( です。

インストールのつづき

4. GuestOSの起動とターミナルの設定

VMWareからGuestOSを起動しましょう。アラームのダイアログが出ますが無視。
ターミナルの種類を聞かれますが、VT100でOKなのでそのままEnterを押します。


5. PXEサーバの起動



自分(GuestOS)がインストールサーバになるのでServerを選択します。


6. インストールサーバのネットワーク設定

GuestOSとBIG-IPが直接接続されているはずなので、以下の設定はすべてデフォルトでOKです。

  1. Use existing DHCP server on subnet [no]?
  2. IP network [10.1.10]?
  3. IP address of server 10.1.10.[n] [199]?
  4. Lower IP range for clients 10.1.10.[n] [200]?
  5. Upper IP range for clients 10.1.10.[n] [210]?

これらの設定を確定させると転送プロトコルを指定します。これもHTTP(デフォルト)でOKです。
これでインストールサーバが起動しました。

7. BIG-IP側の準備

BIG-IP3600は以下の方法でNetbootします。古いハードウェアだと他の方法もありますが、同じ方法でも大丈夫です。

rootでログインし、
# b db Boot.NetReboot enable
# reboot

でネットブートを有効にした上で再起動します。
再起動後にBIG-IPがDHCPクライアントになりインストールサーバからIPアドレスを取得し、インストーラが起動します。


8. インストールウィザード

BIG-IPが起動してターミナルの種類を指定するとウィザードが始まります。ここでは以下の設定を行います。

  1. インストールソースの選択(他の場所を指定しないのでNoを選択)
  2. 起動イメージの選択(HD1.1かHD1.2にします)
  3. インストールするソフトウェアの選択(1種類しか選択できないと思いますのでそれを)
  4. 引き継ぎたい設定が入っているパーティションの指定(クリーンインストールの場合はNoneを選択)
  5. どこのパーティションに何をインストールするかの確認
  6. デフォルトのブートパーティション・syslog・management portの設定


特に迷うことは無いと思いますが、デフォルトの選択しが[No]だったり[None]になっているので要注意です。
また、最後のブートパーティションやsyslogの設定はデフォルトでOKです。

この後続けるかどうかの確認で[Yes]を指定するとインストールが始まり、その後Enterを押すと再起動します。このときは内蔵ディスクから起動してくれます。ログインプロンプトが出れば完了です。